メーティスの猛毒

一人の女性が泣いていた。その周りには、雀や鳩などが集まっていた。しかし、集まった鳥たちは全て死んでいる。

「これって……」

透の頭の中に、動物の不審死の話がはっきりと思い出される。玲奈はその女性に近づき、声をかけていた。

「どうかされましたか？大丈夫ですか？」

女性は顔を上げ、涙を拭った。その目は赤く腫れている。

「すみません。……この子たちにパンをよく上げていたので、悲しくて……」

その顔に、どこか透は見覚えがあった。どこで見た顔だろうと記憶を辿る。玲奈が小声で言った。

「あなたは、西園寺照（さいおんじてる）のご家族ですか？顔がとても似ています」

女性の顔が強張り、玲奈は「記者ではございませんので、ご安心を」と微笑んだ。女性は警戒しながらも口を開く。

「はい。私は……無差別殺人の加害者の家族です」

透の心臓が、ドクンと跳ねた。



女性ーーー西園寺香奈（かな）の自宅は研究所から離れていなかった。動物の不審死の話が聞きたいと玲奈が言い、二人は香奈の自宅に行くこととなった。

「あの……西園寺被告の妹さん、なんですか？事件が起きたのは福井県ですよね？どうして……」