すきな人は…お兄ちゃん
洗い物をしながら時計を見ると、まだ6時過ぎ

学校へは8時前に出れば間に合うから、まだまだ時間に余裕がある

「あっ、そうだ、卵焼き作ろうかな、お弁当の練習になるし…」

冷蔵庫を開けて卵を取り出して割って…

卵焼きを作りながら、うめぇ!っていう笑顔のお兄ちゃんを思い浮かべてる

さっきお兄ちゃん…眉ぴくってさせてた
あの仕草大好きなの〜っ!

思い出したらニヤニヤしてきて

「くぅ〜っ!」

思わず小さく叫んじゃった

「…結愛?」

背後にお父さんの声がして、びっくりして卵焼き器でヤケドしちゃうかと思った!

「…お父さん、おはよう、あの…これから?」

どうしよう、しどろもどろ

「今日はちょっと遅く出るんだ、いい匂いしてるな、卵焼き?」
「うん、あの、お父さん食べてみる?味はわかんないけど…」
「いいのか?嬉しいなぁ、朝から結愛のお手製卵焼きが食べられるなんて、幸せだなぁ」

お父さん、目を細めてる

お父さんは優しくて、あたしのことをとっても可愛がってくれるの

「お母さんのみたいに上手じゃないけど…どうぞ」

ご飯とお味噌汁をよそって、お新香といっしょに卵焼きも並べた

「いただきます…あー、ちょっと固いかな、でもおいしい、うん、味はいいよ、結愛ありがとう」
「…よかった、じゃあ…あたしも食べようっと」

お父さんと2人の食卓は、なんとなくほっとする

「結愛、時間いいの?」

お父さんといろいろ話してたら、結構時間経ってた

「わ、大変、急がなくちゃ」
「急げ急げ、お父さん片付けやっとくから」
「えー、いいの?」
「たまにはいいよ、卵焼きごちそうになったからな、それより急ぎなさい」
「うん、お父さんありがとう」

部屋に戻って制服に着替えて、髪をとかして

「行ってきます」
「行ってらっしゃい、気をつけるんだよ」
「うん、お父さんもね!」

お兄ちゃんを見送ったときよりも、日差しが強い

「お兄ちゃん、もう朝練終わったかな」

お兄ちゃんのサッカー姿を思い浮かべて、またお兄ちゃんのプレイが見たいな、と思う

お兄ちゃん…カッコいいの

つい零れ落ちる笑|《えみ》をなるべく我慢して、学校へ急いだ
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