すきな人は…お兄ちゃん
「おはよー」
「おはよー結愛、朝自習、英単テストやるって」
「えー!待ってよ何ページ?」

単語帳開きながら、ふと時間割見て
3時間目の「音楽」っていう文字見て思い出した

「お兄ちゃんっ…」

うっかり呟いたのが友だちに聞こえちゃって

「ん?お兄ちゃん?結愛、お兄ちゃんがどうかした?」
「あっ、ううん何でもない」
「もー結愛ったらほーんと、お兄ちゃんLOVEなんだから〜」

笑われちゃったけど、あたしの気持ちは気づかれてない…はず

「ね、これってさ…」

単語帳指さして誤魔化す

目は単語帳追いながら、頭には…アルト笛のこと浮かんでる

もしお兄ちゃんがアルト笛使ったら…

間接…キス…に、なるよね…

かーっと、カラダの奥が熱くなるのを感じて
心なしか、ほっぺたも熱くなってる気がする

どうしよう、ドキドキしてきちゃった

「…結愛?顔赤いけど大丈夫?熱?」

友だちが心配して額に手を当ててくれた

「え…そう?赤い?」
「んー、熱はなさそうかなー、でも無理しちゃダメだよ」
「うん、ありがと」

アルト笛のせい、って思ってたけど、単語テストが終わって2時間目が終わる頃、ぶるっと寒気がきた

「結愛、大丈夫?目、充血してるよ」
「…え?」
「ちょっと保健室行こ?」

友だちに連れられて保健室で検温したら37.6℃

「あー、熱あるね、キツくない?大丈夫?」
「ちょっと…」
「早退だね、お家の人誰かいるかな」
「あ…」

今日はお父さんもお母さんも午後出勤、ということは…いま準備の最中か、もう出ちゃったかな

「たぶん仕事なので…1人で帰れます」
「そう?じゃあ、うんと気をつけて帰るのよ、お大事にね」
「はい、ありがとうございます」

教室に戻って支度して、学校を出る

15分くらい歩けば家に着くのに、朝は平気で歩けたこの距離が遠く感じて

やっと家に着いたけど、玄関ドアが重く感じる

「ふぅ、ぅ…」

着替えたら水分摂らなきゃ、と思うけど、身体が重だるい

「は、ぁ…」

かったるいけど部屋着に着替えて、食べるはずだったお弁当箱を取り出す

ケータイ見たら、お母さんからメール来てた

今夜打ち合わせで遅くなるから、作ってあるスープで晩ご飯先に済ませててね、って

お鍋の蓋を開けたら、おいしそうなポトフ

「スープ飲んだら寝ようかな」

お弁当は冷蔵庫に入れて、スープ飲みながらぼんやり、お兄ちゃんのことが頭に浮かんで

「…笛」

アルト笛のこと思い出す

使ったのかな、と思うとドキドキしてくる

「はぁ、ぁ…」

スプン置いて、ため息

「…どうしよう」

ここであたしが悩んでも仕方ないってわかってるけど、でも…やっぱりドキドキする

使ってて欲しいのか、欲しくないのか…
どっちにしてもドキドキ

カップを片付けて、部屋に入って
ベッドに潜って体温計を脇に挟む

ひんやりと冷たい体温計を心地いいなと感じながら、浮かんでくるのはやっぱり、お兄ちゃんの笑顔

「早く帰ってこないかな…」

ピピッと鳴って液晶を見ると、少し熱が上がって37.8℃になってる

「はぁ…早く帰ってきて…お兄ちゃん」

お兄ちゃん、って口にするだけでドキドキしてくる

カラダが火照って感じるのは熱があるから?
それとも…








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