すきな人は…お兄ちゃん
「…結愛?だいじょぶか?」

うとうとしながら、お兄ちゃんの声が聞こえた気がしてうっすら目を開けたら

「結愛?」
「…お兄ちゃん?」

ほんとに、お兄ちゃんがいた

「お兄ちゃん、学校は?」
「部活やんないで帰ってきた」
「…え?」
「母さんから連絡来たからさ、結愛が熱で早退した、って」

額にお兄ちゃんの大きな手

「んー、まだあっちぃな、可哀想に」

首すじにも、お兄ちゃんの手が触れてる
冷たくて気持ちいい

「起きられるか?病院行った方がいいぞ」
「…うん」

身体起こすとき、お兄ちゃんが手伝ってくれた

「…はぁ、っ」

さっきより熱があるのかな、動くのがだるいし、頭が痛い

「きちぃ?」
「…うん」
「着替えできるか?なんなら手伝うぞ?」
「…だいじょ、ぶ」

ほんとはすごく面倒だけど、お兄ちゃんに手伝ってもらうのは恥ずかしい

やっと着替えて…病院行ったら、季節外れのインフルエンザだって

「…ふぅ、ぅ」

帰ってきたらすっかり疲れちゃった
手洗いうがいして、リビングのソファに沈み込むと

「とりあえず学校連絡しとかねぇとな、えーと」

お兄ちゃんが学校に電話してくれてる

「そーなんっス、熱高くてキツそーなんスよね、はい、ありがとうございます。今度、先生ンとこ遊び行きますね」

担任の先生はお兄ちゃんも教わった、優しい先生

「ゆっくり休んでね、って言ってたぞ」
「…ありがと、お兄ちゃん」

身体がぽかぽかしてるのは、熱のせいだよね

「しっかし真っ赤だなー可哀想に」

ボトルに、スポーツドリンク入れてくれた

「ちゃーんと飲んどけよ?」
「うん…」

ザラザラしてる喉に、ドリンクがすーっとしみる

「飲んだら部屋行くぞ、歩けるか?」
「…だいじょ、ぶ」

お兄ちゃんが支えてくれて、ゆっくり階段上って…ベッドに寝かせてくれた

「んー、どーすっかな」

お部屋ぐるっと見回して

「ここでやるか」

折り畳みのローテーブル持ってきて開いて
その上に教科書や参考書置いてる

「…お兄ちゃん?」
「気にしないで寝てろ」
「…でも、移っちゃうよ」
「インフルエンザで高熱の結愛のこと、ひとりにできねーだろ」

ニコッと優しい笑顔のお兄ちゃん…癒される
節々が痛むのも頭痛も、スーッと消えてく気がしてくる

…そんなことないんだけど

「なんか持ってくるか?プリンとか食う?」
「食べようかな」
「ん、待ってろ」

勉強しようとしてるお兄ちゃんの邪魔しちゃったかな…と思ったら

「結愛〜、あーん」

えぇっ!!
お兄ちゃん何するの…?

「ほら、口開けろ」

やだよぉ、恥ずかしい

「ひとりで食べられるから」

プリンもらおうとしたら

「病人なんだから言うこと聞く、ほら、あーんて」

うわぁ…大好きなお兄ちゃんに、食べさせてもらっちゃってる…

「結愛は熱出すとプリンだもんな」
「…うん」

お兄ちゃんのプリン食べてたら、ほんとに、身体が楽になってくような気がしてくるから、不思議

「やべぇな結愛」
「…え?」
「ンな真っ赤な顔して口開けてっと…」
「…お兄ちゃん?」

お兄ちゃんも心なしか、ほっぺた赤い気がする

「何でもね、うまいか?」
「うん」

プリンを食べ終えて、お兄ちゃんがボトルにいれてくれた、スポーツドリンクひと口飲む

「寝たら熱下がってるぞきっと」
「お兄ちゃんありがと」
「ここいるからな」
「うん」

すぐそばに、大好きなお兄ちゃんがいる

安心したら眠気がきて…気づいたら寝ちゃってた








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