すきな人は…お兄ちゃん
目が覚めたら、喉が乾いてることに気づいて、えっと…あ、インフルエンザって言われたんだっけ、って思い出した

だるい身体を少しだけひねって、お兄ちゃんが用意してくれたボトルから、スポーツドリンクを飲む

「…あれ…お兄ちゃん…どこ?」

ここで勉強する、ってテーブル出して勉強してたはずの、お兄ちゃんの姿がない

話し声が聞こえる気がして耳を澄ますと、微かにお兄ちゃんの声が聞こえてくる

自分の部屋か、廊下で話してるのかな

お兄ちゃん楽しそうに笑ってる

…そーっとドアが開いて

「お、目ぇ覚めたか、気分どうだ?」

言いながら、お兄ちゃんがあたしの額に手を当てる

いきなりだからドキッてしちゃった…

「んー、まだあっちぃなー、インフルエンザだもんな、仕方ねぇか」
「…お兄ちゃん」

わ、恥ずかしい…声掠れちゃったかも

「んー?」

とっても優しいお兄ちゃんの眼差し

「どした?結愛」
「あたし…寝言とか、言ってた?」
「あー、んー、言ってたかな」

えー、何言ってたんだろ…恥ずかしい

「なんか夢でも見たか?」
「…よくわかんないけど…なんて言ってた?」
「オレのこと呼んでたな、ほんとに呼ばれたかと思って返事したら、寝言だった」

お兄ちゃんは、眉をぴくってさせて、にこって笑う

お兄ちゃんが片眉ぴくってすると、胸がキュンってなっちゃうの

けどそんなの気づかれたらいけないから、タオルケットで顔隠した

「ゆーあ、そんなんしたらまた熱上がっちゃうぞ」

掛けたばかりのタオルケット、はがされちゃった

「熱、測っとくか、まーまだ高ぇだろーけど」
「…うん」

そういえば、さっきは誰と電話してたのかな、って…気になる

「…お兄ちゃん」

何にも考えずに呼んじゃった

聞いてどうするの、相手がもし…

「あー?」
「…」

お兄ちゃん、優しいしモテるから、彼女…居るんだろうけど…

今までも、お付き合いしてた人、いたのわかってるけど…

お兄ちゃんはなぜか、家に連れてこない

お兄ちゃんがそういう人を連れてくる、っていうのがわかってたら、絶対出かける、って決めてるから、不意に来られたら困るんだけど…

だってね。

お兄ちゃんのそういうの…見たくないもん

お兄ちゃんはあたしだけの、
ずーっと、結愛だけのお兄ちゃんでいて欲しいから…

「結愛、なに?」

さっきからお兄ちゃん、もしかしてずーっとあたしのこと、見てた?

「聞きたいことあんじゃねぇの、どした?」
「…うん」

答えを聞ける覚悟なんて、まだ全然できてないのに、どうして呼んじゃったんだろ

「…熱、測る」
「おー、そうだよな、測ってみ」

よかった…ごまかせたかな

けど電話の相手が気になることには変わらない


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