禁断プラトニック~元若頭が惚れたのは女子高生~
「フツーに笑えるし、トランプごときでマジになるし。父さんや母さんが心配してたような、〝世間にぜつぼーしてる感じ〟じゃないから、俺、拍子抜けした」
そして笑った勇海の顔は、今までとは違って子どもらしく隙だらけのホッとした笑顔で。胸の奥のどこかが、じんとあたたかく疼いた。
……なんだこれ。くすぐってえ。つか、なんなんだよこの家族。
沖田孝蔵といい、鞍馬夫妻といい、そしてこの子どもたちといい……どんだけお人好しでお節介なんだよ。
「……烈くん、泣いてるの?」
心配そうな苺の声で、我に返った。
泣いてる? 俺が? 涙腺なんて、とっくに退化したと思っていたのに……。
「泣くなよ、次はカツレツ勝たせてやるから……」
そう言って気まずそうにティッシュの箱を差し出す勇海に俺は吹き出し、眼鏡を外してティッシュを受け取った。
トランプで勝てなくて泣いてるわけじゃねえっつーの。
心の中で突っ込みつつ涙を拭い、最後に思い切り鼻をかんで、彼らに向けて微笑んだ。
「おお、じゃ次は絶対に俺が勝つからな。苺、協力してくれ」
「うん!」
気を取り直してトランプをシャッフルしていると、ふと視線を感じた。振り向いてみれば、孝蔵が穏やかに目を細めて俺たちのことを見ていて……。
くそ。あいつの策略通りってわけかよ……。
気恥ずかしくなった俺はすぐに子どもたちの方へ向き直り、トランプを配り始めるのだった。