ポケベルが打てなくて
3. 揚げあがるまで抱きしめて
白のTシャツに小豆色のエプロンを掛けて、同じく小豆色のバンダナを頭に巻く。
ショッピングセンターの奥にあるロッカールームで身仕度を整えた後、バイト先である惣菜屋の調理場へ足を踏み入れた。
そこには既に、俺と同じく小豆色に包まれた菜摘がいる。
コロッケの仕込みをしていた菜摘は、一瞬その手を止めて、すぐまた何事もなかったようにその作業を再開した。
……いま、確実に俺の方、見たよな?
で、無視かよ。
明らかに、これは……怒ってる、んだよな。
「あー……菜摘、あの……さ」
「……………………」
何の返事もせず、菜摘は仕込みを終えたコロッケの入ったバットを手に、調理場の奥にある冷蔵庫へと向かった。
しかも、俺の顔をチラリとも見ないまま。
これはマズイ。
今日のバイトのシフトは、三時間後に店長と入れ替わりになるまで、俺と菜摘の二人だけだ。
これからの時間、夕飯の惣菜を調達しにくる客が増える。
接客と調理を分担してやんなきゃなんねーのに、いまの状況じゃ絶対無理だ。
とにかく、仕事をスムーズに進めるためには、ポケベルの返事が打てなかった理由を分かってもらうしかねーな。
「なぁ、菜摘。ちょっと聞いてくれって」
――――無視。
……何でだよ。
何で聞いてくんねーんだよ。
いつもなら、主婦客にも評判のいい元気な笑顔を見せてくれるってのに。
昨日だって、ポケベルショップからの帰り道、あんなにうれしそうにしてたってのに。
何で、俺に背を向けたままなんだよ。
ショッピングセンターの奥にあるロッカールームで身仕度を整えた後、バイト先である惣菜屋の調理場へ足を踏み入れた。
そこには既に、俺と同じく小豆色に包まれた菜摘がいる。
コロッケの仕込みをしていた菜摘は、一瞬その手を止めて、すぐまた何事もなかったようにその作業を再開した。
……いま、確実に俺の方、見たよな?
で、無視かよ。
明らかに、これは……怒ってる、んだよな。
「あー……菜摘、あの……さ」
「……………………」
何の返事もせず、菜摘は仕込みを終えたコロッケの入ったバットを手に、調理場の奥にある冷蔵庫へと向かった。
しかも、俺の顔をチラリとも見ないまま。
これはマズイ。
今日のバイトのシフトは、三時間後に店長と入れ替わりになるまで、俺と菜摘の二人だけだ。
これからの時間、夕飯の惣菜を調達しにくる客が増える。
接客と調理を分担してやんなきゃなんねーのに、いまの状況じゃ絶対無理だ。
とにかく、仕事をスムーズに進めるためには、ポケベルの返事が打てなかった理由を分かってもらうしかねーな。
「なぁ、菜摘。ちょっと聞いてくれって」
――――無視。
……何でだよ。
何で聞いてくんねーんだよ。
いつもなら、主婦客にも評判のいい元気な笑顔を見せてくれるってのに。
昨日だって、ポケベルショップからの帰り道、あんなにうれしそうにしてたってのに。
何で、俺に背を向けたままなんだよ。