君が生まれて来てくれたこと僕が出会えたこの世界がとても輝くなら


三粒

私は龍になる事に対して恐怖がある
何故だろうか
それは母の様に殺されるからか
はたまた蔑まれるからか
でも私は蔑まれても何も興味すら無い
私は一人だ
「………」
私は無言で学校のプリントを終えて屋上にいた
人に優しくするなど到底出来ない
したくない
私の家族を殺した人間など死んで仕舞えば良い
「あぁ、鱗が」
龍人は気持ちが昂ったりすると鱗が生えてくる
そっと鱗を摩り、一枚取った
痛みはないが少しピリッとはする
「虹色の青」
そう言うと虹色だった鱗は青色になり結晶になった
私は結晶を生み出す龍
母の力
「夜風!」
呆けていると鬼頭が扉をぶち壊して入って来る
(先生は困るだろうな、知らんけど)
私はギロリと睨み
「また来たか」
と言い放つが鬼頭はニコニコとしている
(屋上から飛び降りようとした時は止められたが今度こそしてやろうか)
私の視線に気が付いた鬼頭は私の腕を掴む
「触るな!」
私はそう叫び、鬼頭の頬を引っ掻く
鬼頭の頬からは血が滴り落ちる
「ってぇ」
「フ-………フ-」
目が熱い
心臓がうるさい
血が沸騰する様に熱い
「夜風」
ギュッと抱き締められる
それが鬼頭だと分かるのにはだいぶ掛かった
「は、なせ!」
グルルと唸る
「怖くない」
私を見る鬼頭は真剣な顔をしていた
「ぬかせ!どうせ人間など弱い!」
私はギロリとその目を睨み鬼頭の首を掴む
「死ぬか!此処で!」
どうせ、死ぬのが怖くて震えるだろう
「………やれよ」
(!?)
鬼頭は怯えない
力を強めても怯えない
それどころか私の手を握りゆっくり首から離す
「お前は、優しいから」
(優しいだと?)
「黙れ」
睨むだけしか出来ない
「どこが優しいと言う!嘘は言うな!」
私は暴れる
「なら言ってやる!」
雨の日に捨てられた猫のために傘をやったり
俺が怪我するたび来てくれた
人が泣いていると素っ気なくしつつも優しい言葉を伝えていた
「人間が憎いのにお前はどこか優しかった!」
「お前に何が分かる」
身体が震える
幼き頃に失った自分の愚かさを
両親を助けられなかった辛さを
自分が愛されなかったことを
自分が弱かったことをぶつけられなかったこと
「お前如きに何が分かる」
辛さも苦しさも何もかも
人間が憎いと思って生きて来たこの思いを
「龍の本を読んだ」
龍の本
それは
龍について載っている本だ
「あの本を買うとはな」
私は目を伏せ、鼻で笑った
「龍と契約したらどちらかの死でどちらも死ぬ」
「だとしたら何だ」
ギロリと睨む
鬼頭は真剣な顔をして
「契約しよう」
そう言った
(私と?)
「巫山戯た事をぬかすなよ」
「巫山戯てなんかない」
私は暴れるが抱き締められる
強く
優しく
暖かく
「離せ」
「嫌だ」
私は暴れるのを辞めてギロリと睨む
「お前がいなくなるんじゃないかって」
(どうしてそこまで)
「お前の何も知らないのにな」
私は暴れないがそっと離れる
そして
光に包まれる
そこには
「………龍」
私の本当の姿があった
「後悔はしないな」
私は目を見てそう問う
鬼頭は頷きそっと私の額を撫でる
「契約しよう」
「………」
私はそっと顔を近づけ鬼頭の口にキスをする
そして
一つの鱗を鬼頭の口に入れ飲ませた
「我、暁月夜風は此の者を契約者とし生涯愛すると誓う」
「俺、鬼頭凛月は此の龍を生涯愛すると誓う」
こうして
一人の男と
一匹の龍は
契約を
交わした
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