幼馴染との正しい距離感2
「………いつ?」

「あの後、しばらくしてから」



「一発殴られた後、色々話した
あいつ、俺に憧れてたって言うんだぜ?
腹立つよな」


「ずっと、俺みたいになりたかったとか」


「……ほんと、ふざけんなって感じ」


悪態をつきながらも
すーちゃんの表情は穏やかで


きっと、すーちゃんも
胸に抱えたまま、ずっと言えなかった事を
こーくんに話したんじゃないかって思う


お互い本音で


言いたかったこと、伝えたかったことを
吐き出したんだ



「……あんな風に言ったけど
倖が今まで順風満帆に生きてきたわけじゃないって、ちゃんと分かってる」



……。


こーくんに近付く、たくさんの人


押し付けられた期待と勝手な理想像
歪んだ価値観


全部が嫌になって

目を閉じて、耳を塞いで


家に閉じ籠っていた時のこーくんを
すーちゃんも知ってる



「俺がそうだったように
あいつが色々苦労してきたのも知ってる」



憧れていたから


ずっと見てきたからこそ、知ってる



「確かに、俺よりはそつなくこなしてた
俺にないものを持ってた
だけど、それが全てじゃない」



本当はちゃんと解ってた



「俺は、あいつを俺基準で見ていただけ」
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