生きていくんだ。それでいいんだ。
「お一人でしょうかー?」
入り口に突っ立ったままの僕に向かって、
大学生ぐらいの女の子が話し掛けてきた。
周りが年配男性だらけなので、
余計にこの子の存在が際立つ。
「いえ、人を探してまして・・。」
「テツさんですか?」
「・・え?・・・・はい。
どうして分かったんですか?」
「え・・だってそれしか考えられないじゃないですか。
・・・テツさーん!お仲間の方がいらっしゃいましたよー!!」
店員の女の子がカウンター席の方へ振り返る。
そこに・・・・・・・・
“行けば一発で分かると思います。
その店で食事をしている人の中で、
一番病人っぽいというか・・
一番貧弱そうな男がテッちゃんです。“
梅田課長の言葉がそのまま当てはまる・・
屈強な漁師さん達とは真逆の・・
本物の猫が人間になったと錯覚する程の“猫背”をこちらに向けた男性が一人座っていた。
「豊川テツさんですか?」
「・・・・・・・・・。」
その隣に立って顔を伺う。
猫背の後ろ姿が良く似合う程、
顔色も生気も今ひとつなその人は、
カツ丼を食べている途中のようだった。