生きていくんだ。それでいいんだ。


「一本吸ってからでも宜しいですか?」


「・・・煙草ですか?」


店を出たすぐ先に設置されている灰皿の前で、豊川さんが内ポケットに手を伸ばした。


「・・・ゴホッゴホッ!!」


「大丈夫ですか?」


「はい・・ゴホッ!ゴホッ!」


何と言うか・・この世で最も煙草が似合っていない人のような気がする。



「豊川さん・・。

まだ会って間もないのに失礼ですが、
煙草はお体に悪いですよ?」


「はい・・。だから1日1箱吸うようにしています・・。」



まるでヤクルトとか飲むヨーグルトとか、

そういった健康食品を摂取しているかのように答えてきた・・。



「星野君・・でしたか?」


「はい。セイズ東派出所から異動してきました。よろしくお願いします。」


「セイズ東と言えば・・

“雷爺さん”こと・・鈴木 町内会長がいらっしゃった地域ですね・・。」


「お詳しいですね。僕も赴任当時からお世話になった方です。」


「あの人に叱られながら、

交番勤務で経験を積んで一人前になった警察官は少なくありません。

殺しても死なないお爺さんだと思ってましたが・・

やはり年齢には勝てなかったようですね・・。」


「・・そうですね・・・。
早いもので、来月で3回忌です。」


「・・お待たせしました。参りましょう。」



煙草を消した豊川さんと共に、
再びセイズ署へと戻る。



















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