生きていくんだ。それでいいんだ。
「初めて視えたのは・・
・・・母でした・・。」
「・・・・・・。」
「会話も出来ました。むしろ今でも実家に帰れば母はいます。最初は夢だと思いました。小学校に上がってすぐ・・もうすぐ母の一周忌の時でした。普通にリビングに立ってて・・。」
「星野君。そんなに早口で喋らなくても大丈夫ですよ。」
「すみません・・ずっと誰にも言えずにいたので・・。」
「きっと・・君やお兄様の事が心配だったんでしょう。」
「そう言ってました・・。
でもそのおかげで・・僕だけにしか視えてなかったけど、
母が死んだ事なんて時々忘れてしまうぐらい・・日常生活に母が居てくれました。
一緒にドラマを観たり、日本アカデミー賞の授賞式を観たり・・。」
「2回目は・・・?」
「町内会長さんです・・・。」
「やはり鈴木会長さんでしたか。」
「東派出所での最後の公務の時・・
近所の子供達や同僚が異動祝いをしてくれた時も、
一緒に混じって“頑張れよ!”とエールを送ってくれました。」
「お寺で生まれ育った君なら良く分かっていると思いますが、
“情念”が強く残っていれば魂は留まります。
お母様が自分の子供を想うように、
鈴木会長が街の治安を願うように、
情熱と共に海で生きた男達のように。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」