生きていくんだ。それでいいんだ。


「星野君、今すぐここを立ち去りなさい。今すぐ警察官を辞めなさい。」


「え・・・・。」


「刑事課で扱うヤマは、
ほとんどが殺人事件。

当然、予期せぬ死が訪れた被害者は、

この世への未練・犯人への怒りで強い情念が残ります。

恐らく・・ほとんどの被害者が君に訴えかけてくるはずです。」


「・・・・・・・・・。」


「もし・・もしその力が完全に開花すれば、

私のように全ての死者が視えるようになってしまいます。

私が受ける苦しみを、君のような未来ある若者が味わう必要なんてない。

被害者という名の“死者”と隣り合わせするこの仕事は・・非常に危険です。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・。」


「・・ありがとうございます・・
・・・豊川さん・・・。」


「・・・・・・・・・。」



「でも、視える・視えない以前に・・

僕が警察官になったのは、そんな被害者の人達の為に働きたいと思ったからなんです。

勿論、刑事ドラマの影響というか・・憧れみたいなものもありましたけど、

一番はやっぱり・・

犯罪者と戦って、一人でも多くの被害者を救いたいと思ったからなんです。」


「・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・。」


< 29 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop