生きていくんだ。それでいいんだ。
「じゃあ次に鑑識班、長野。」
「うぃーっす。」
“あ~マジ寝みぃ・・”なんて心の声が聞こえてきそうな程、
かったるそうな返事をした長くんが立ち上がった。
「被害者の死因、凶器はお手元の資料ご覧ください。
死亡推定時刻は昨日の13~14時。
解剖してガッツリ調べましたのでこちらで間違いありません。」
「あれ?・・・なに・・?
・・おい長野、
指紋は採れなかったのか?」
「うわっ・・バレましたか。
残念ながら、
部屋のドアノブ、
散乱したリビング、
現場となった403号室からは、門田さん以外の“第三者”の指紋が検出出来ませんでした。
勿論、凶器の包丁に至っては誰の指紋も採れていません。
・・・犯人は“手袋”をして犯行に及んだって事っすね。」
「参ったな・・。
物的証拠が無いのか・・。」
「関本さん、もう一つ悪い報告っす。
指紋の他に、“靴痕”もリビングには残っていませんでした。
つまりこの犯人はご丁寧に玄関で靴を脱いで、素足で乗り込んだ事になります。
よっぽど礼儀正しい奴だったか・・」
「・・少しでも自分に繋がる痕跡を残したくなかったか。
ハッ・・手こずらせてくれるじゃねぇか。」
関本主任が僕へアイコンタクトを送ってきた。
それに応えて“はい”と頷く。