リボン~もう1度君に、プロポーズ~
特に変わった様子がなかった家の中に入ると、あの日と同じようにリビングに通された。

「あの、こちらの方は…?」

乙國さんがお兄ちゃんに視線を向けた。

「初めまして、希里恵の兄の田渕風斗です。

今回は妹のつきそいできました」

お兄ちゃんはペコリと頭を下げた。

「ああ、お兄さん…」

乙國さんはなるほどと言うように、首を縦に振ってうなずいた。

「お父さん、俺たちが今回家に訪ねてきたのは5年前のことについてです」

周晴さんが話を切り出した。

「5年前…」

「俺は希里恵に他に好きな男ができたと、お父さんから聞かされました。

俺は彼女のためを思って彼女が幸せになるならばと思って、その時はあきらめました」

周晴さんは乙國さんに言った。
< 97 / 122 >

この作品をシェア

pagetop