リボン~もう1度君に、プロポーズ~
「どこに行くんですか?」

お兄ちゃんが乙國さんに声をかけた。

乙國さんはチェストの1番下の引き出しから何かを取り出すと、それをテーブルのうえに置いた。

「これは…?」

色あせている2冊の大学ノートだった。

「これは、周晴のお母さん――周子がつけていた日記帳だ」

「お母さん…?」

訳がわからないと言った様子で呟いた周晴さんに、乙國さんはソファーに腰を下ろした。

「周晴、お母さんはお前が3歳の頃に病気で亡くなったと言ったな…?」

「はい、そう聞きました」

乙國さんは首を横に振ると、
「本当は…周子は、病気で亡くなったんじゃないんだ」
と、言った。

「えっ?」

「――周子は…」

乙國さんの声は、震えていた。

「――周子は、自殺をしたんだ…。

首を吊って…僕と周晴を残していなくなったんだ…」
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