貴方があまりにも綺麗に笑うから
粉雪を失って
幾年流れたのだろうか
桜になった粉雪を見るのが
今では日課
ある日
私は粉雪の部屋にいた
何故だか
ここにいる気がして
不意に机を見た
日記が綺麗にまとめられている
「…これは」
ーー何月何日
今日は愛しい人が泣いていた
目を治してあげたい
だから
この力を手に入れました
これで
あの人が笑うなら
私は死すら怖くない
ー何月何日
旦那様
先逝く事を許して下さい
愛しています
幾年も見守っております
私を妻にしてくださり
私を愛してくださり
私は嬉しゅうございました
とても幸せでした
「粉雪、この大馬鹿者が」
もう
笑ってくれることすら
話してくれることすらできない
抱きしめることすらできない
愛しい
愛しいよ
何重にも積まれた日記を抱きしめて
私は泣いた
ふわりと抱きしめられる感覚がした
粉雪の温もりを感じる
「粉雪」
いつか会う事は叶うか
いつかこのまま過ごしてゆく事はできるか
いつか
会い願うことは出来るか
いつか
いつか
私とまた結ばれてくれるか?
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