桜が散ったら、君に99回目のキスを。
不意に、2-Bの教室まで続く廊下で軽く肩を叩かれた。


驚いて振り返ると、ポニーテールを結わえたかこが「おはよう」と明るく笑う。


かこは中学からの同級生で、クラスもずっと同じの友人だ。


一言で表すなら人懐っこい子。


中学入学早々、円依って変わった名前だねと1番に話しかけてくれたのもかこだった。


以来、学校生活のほとんどの時間をかこと過ごしている。


私はかこに「おはよう」と返して、ずり落ちたスクールバックの紐を肩にかけ直す。


「今日遅いね。いつも私よりずっと先に来てるのに」


横に並んだかこは不思議そうになんで?と小首を傾げた。


「途中で気分悪くなっちゃって…」


「え、大丈夫なのそれ」


「うん、もう平気。西高の人が助けてくれて」


「へぇ、西高。あんまりいい噂は聞かないけど、親切な人もいるんだね」
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