桜が散ったら、君に99回目のキスを。
「春が降る。」


相馬くんの唇からその一節が溢れた。


「君の嫋やかな肩に積もる。

風の色。

花の香り。

海の煌めき。

鳥の囁き。」


相馬くんと目が合って、続きを促される。


「…生きとし生けるものの命の輝きは君のように美しいのに、全ては色褪せ、終わりというものは呆気ない。

いつだってさよならは僕たちの傍にいた。

だから、穏やかな春の日に僕は不完全を───・・・」


『次は西浜高校前、西浜高校前です』


車内に響く、無機質なアナウンス。


私たちは顔を見合わせて、はにかむように笑う。


もっとも、相馬くんはまたよく見ていないと分からない程だったけれど。
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