桜が散ったら、君に99回目のキスを。
(……戻るか)


そろそろ第2試合が始まる5分前だ。


欠席していなければ相馬くんも見つけられるはず。


そう思って体育館の方へと足を向ける。


来た道を戻る途中でふと、見覚えのある黒髪が視界の端に映った。


そして────





「かこ……?」


その姿を捉えた瞬間、足がすくんだように動かなくなった。


相馬くんの横で弾けるような笑顔を零しているのは、他の誰でもないかこだった。


ピクリ、と指先が跳ねる。


呼吸が浅くなって、世界から音が消えていく。


開いた唇から、薄い空気が漏れた。


かこの白い手が相馬くんの腕にかかる。


相馬くんは見たことがないくらい、優しい表情で笑っていた。
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