桜が散ったら、君に99回目のキスを。
・・・───彼が西高にいるの


私、名前を聞かなかった。


・・・───幼馴染なんだけど、同い歳で


それくらいしか、私は相馬くんのことを知らない。


・・・─── ずっと好きで、一昨日付き合うことになった


「………っ」


…そうか。


かこがずっと話していたのは相馬くんのことだったんだ。


かこが追いかけていたのは、相馬くんだったんだ。


初めから、そう知っていればよかった。


そうすれば、


そうすれば余るほどのこの熱を知らずに済んだのに。


右足を1歩下げれば、視界が涙で滲んだ。


2人に背を向けて歩き出せば、温度を失った唇が震えた。


…戻らなきゃ。


第2試合が始まってしまう。


客席に私がいないと、かこがきっと心配してしまう。


私はそう自分に言い聞かせることしか、できなかった。
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