桜が散ったら、君に99回目のキスを。
「あ……」
ふと、かこが傍にいないことに気がついた。
面倒見がいいかこのことだから心配しているに違いない。
「どうかした?」
「友達、一緒に来てたんだけど…」
「か…綾瀬さんなら鳴宮さんの荷物取りに行ってるのと、鳴宮さんのお母さんに連絡してくれてる。もうすぐ戻ってくると思うよ」
ズクン。
開きたての傷口が痛む。
かこの名前を、知ってるんだ。
当たり前だと思っていても、口にされると思いが揺らいだ。
一刻も早くこの場を去りたくて体を起こそうとするけれど、その肩は相馬くんに優しく押し戻されてしまう。
「まだここ、熱持ってる。お母さんも呼んでるから寝てた方がいい」
冷たい手で触れられた額は一瞬にして熱を帯びる。
なんで。
私に触れないで。
優しくなんてしないで。
口に出せない言葉が、雪のように私の中に積もっていく。
本物の雪なら溶けてくれるけど、言葉たちはそのまま胸の奥底に張り付いてしまった。
「これ、もうぬるいから新しいの持ってくる」
相馬くんはそう言って保健室の端にある製氷機を覗く。
「空だ」
「え?」
「氷が無い」
春だから作っていないなんて、そんなはずは無い。
氷は常時在庫があるようになっている。
それなら怪我人がいたとか……と考えて、第1試合中に捻挫で退場した人が数人いたのを思い出した。
「職員室まで貰ってくる」
「いいよ、私そんなに酷くないから」
「青くなるだろ」
そう言って相馬くんは待ってて、と言い置いて保健室から出ていってしまった。
ふと、かこが傍にいないことに気がついた。
面倒見がいいかこのことだから心配しているに違いない。
「どうかした?」
「友達、一緒に来てたんだけど…」
「か…綾瀬さんなら鳴宮さんの荷物取りに行ってるのと、鳴宮さんのお母さんに連絡してくれてる。もうすぐ戻ってくると思うよ」
ズクン。
開きたての傷口が痛む。
かこの名前を、知ってるんだ。
当たり前だと思っていても、口にされると思いが揺らいだ。
一刻も早くこの場を去りたくて体を起こそうとするけれど、その肩は相馬くんに優しく押し戻されてしまう。
「まだここ、熱持ってる。お母さんも呼んでるから寝てた方がいい」
冷たい手で触れられた額は一瞬にして熱を帯びる。
なんで。
私に触れないで。
優しくなんてしないで。
口に出せない言葉が、雪のように私の中に積もっていく。
本物の雪なら溶けてくれるけど、言葉たちはそのまま胸の奥底に張り付いてしまった。
「これ、もうぬるいから新しいの持ってくる」
相馬くんはそう言って保健室の端にある製氷機を覗く。
「空だ」
「え?」
「氷が無い」
春だから作っていないなんて、そんなはずは無い。
氷は常時在庫があるようになっている。
それなら怪我人がいたとか……と考えて、第1試合中に捻挫で退場した人が数人いたのを思い出した。
「職員室まで貰ってくる」
「いいよ、私そんなに酷くないから」
「青くなるだろ」
そう言って相馬くんは待ってて、と言い置いて保健室から出ていってしまった。