桜が散ったら、君に99回目のキスを。
「あの、円依のお母さんも来たし、私邪魔になりそうだから先に帰るね」


かこが保健室の入口付近から小さく手を挙げる。


「せっかくの球技大会こんなんになっちゃってごめん」


私のせいでかこは相馬くんとの時間がなくなってしまった。


申し訳なさに頭を下げると、かこは私のベットまで駆け寄って顔を上げさせた。


「謝らないでよ。円依の怪我が酷くなくてよかった。帰ったらメッセ送ってね、心配だから」


「本当にありがとう。…彼とは一緒に帰らないの?」


さっき出ていったばっかりだから待つならここで待っていた方が早い。


入れ違いになってしまっても面倒だろう。


そう思ったけれど、かこは意外にも首を横に振った。


「聖利くんこのあとクラスで打ち上げに行くんだって。元々そういう約束だったから」


そうなんだ。


相槌を打ってほっとしている自分に気づく。


私今、すごく嫌なやつだ。


かこがずっと幸せそうに笑ってくれたら。


1度でも、相馬くんが振り向いてくれたら。


両方が叶うことはないなんて残酷だと言ってしまえば、楽になれるんだろうか。


どちらを取るか。


その二択しかないなんて。
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