桜が散ったら、君に99回目のキスを。

Epilogue

「そう言えば、なんで西高の駅にいるの?」


「え?………っあぁ!携帯…」


忘れてた。


スマホ、教室に置いたままだったんだ。


今から行っても間に合わないことはないけれど、ご飯の時間もあるし、今日はお母さんが仕事から早く帰ってくる日だからきっと心配されてしまう。


「…明日いつもより早く学校行くことにする」


早起きせねば仕方ない。


満員電車からも外れるし、よしとしよう。


「何時?」


相馬くんの問いかけに小首を傾げる。


「電車。俺も早めに行くから」


耳が一気に熱くなる。


心臓が早鐘を打って、唇を意味もなく湿した。


だって、そんなの、デートみたい。


「…なに赤くなってんの」


「……っ2人で、出かけるみたいだから」


相馬くんはバツが悪そうに首を搔いて、視線を逸らした。


その耳が赤い。


「…で、何時ですか」


照れ隠しのようにぶっきらぼうな口調でさえ新鮮で。


「15分早い電車。いつもの場所で!」


全てが始まった、あの場所で。


相馬くんはまたよく見ていないと分からないくらい、でもいつもより優しい笑みを口元に描いた。


3両目、前から1つ目のドアを入って右。


桜がいちばん綺麗に見える場所。


また、新しい朝がやって来る。


それはきっと、世界で1番優しい色をしているはずだ。


fin.
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