桜が散ったら、君に99回目のキスを。
*
傘についた雨粒を払って羽を束ねると、焦げ茶色の傘の先からパタタ、と雫が滑り落ちた。
新しい学期が始まったばかりなのに、最近はこんな空模様が続いてほんの少しだけ気分が落ちる。
「嫌いじゃないんだけどなぁ…」
私はそう小さく呟いて曇天を見上げた。
湿気を含んでまとまらない髪も、空から降る閉塞感も、確かにため息を吐きたくなる。
でも通学路に咲くハナミズキの葉に光る雨露だとか、屋根を叩く雫の音だとか、どこか特別さを秘めた時間は、いつも少しの幸せを運んでくれた。
それに……
───・・・大丈夫?
触れられた腕がまだ熱い気がする。
相馬くんがいつも電車通学なのかは分からないけれど、たまたま相馬くんがいる車両に乗れたのが雨のおかげだとすると、雨もそう悪くはない。
私はそんなことを思う自分に苦笑しながら、濡れたローファーを靴箱に置き、屋内用のシューズに履き替えて階段を上った。
傘についた雨粒を払って羽を束ねると、焦げ茶色の傘の先からパタタ、と雫が滑り落ちた。
新しい学期が始まったばかりなのに、最近はこんな空模様が続いてほんの少しだけ気分が落ちる。
「嫌いじゃないんだけどなぁ…」
私はそう小さく呟いて曇天を見上げた。
湿気を含んでまとまらない髪も、空から降る閉塞感も、確かにため息を吐きたくなる。
でも通学路に咲くハナミズキの葉に光る雨露だとか、屋根を叩く雫の音だとか、どこか特別さを秘めた時間は、いつも少しの幸せを運んでくれた。
それに……
───・・・大丈夫?
触れられた腕がまだ熱い気がする。
相馬くんがいつも電車通学なのかは分からないけれど、たまたま相馬くんがいる車両に乗れたのが雨のおかげだとすると、雨もそう悪くはない。
私はそんなことを思う自分に苦笑しながら、濡れたローファーを靴箱に置き、屋内用のシューズに履き替えて階段を上った。