やっぱりあなたと ~クールな上司は強がりな部下を溺愛する~
「離婚しようとしてたんだ。あの時。本当に。」
「・・・」
「子供が生まれて幸せの絶頂にいたのに、生まれてすぐに入院することになって血液検査をしたんだ。」
「・・・」
「そこで、自分の子供じゃないってわかった。」
話をしながら時々ブランデーをぐいっと飲む高辻。
莉緒は目の前のカクテルを見つめながら話を聞いている。
「どん底に落ちて、仕事に生きようって決めて、離婚の手続きを始めた時に」
グラスを見つめていた高辻が莉緒を見る。
「莉緒に出合った。一生懸命仕事に向き合う莉緒を見て、ただがむしゃらに仕事をしていた自分が恥ずかしく思えたよ。まっすぐな莉緒から、目をそらしたいくらいだった。」
莉緒は高辻と出会ったころのことを思いだした。
初々しかった自分も。少し遠い存在だった高辻も。
「俺は莉緒に会って救われたんだ。莉緒と出会ってなかったら、俺、壊れてたと思う。」
知らない話をたくさん聞いて、思い出と重ねていく。
莉緒はあの頃の高辻がそんなことを抱えていたのかと改めて知りながらも、握りしめたままのウインドブレーカーが、心を許してはいけないと思う気持ちを揺るがせないように繋いでくれているような気がした。
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