やっぱりあなたと ~クールな上司は強がりな部下を溺愛する~
「本当にこんなちっさい手で」
和哉はそれ以上の言葉はのみこんだ。

こんなに小さな手で、華奢な体で、どれだけの物事を経験して、抱えて、乗り越えてきたのだろうと思うと今すぐにでも、もう一度抱きしめたくなる。


朝、目を開けた瞬間見えたのは瞳を潤ませる莉緒の顔だった。

思わず寝たふりをしてごまかした和哉。

本当は莉緒が起きる前から目を覚ましていた。
自分の胸に顔をうずめて、もう一度莉緒が眠るまで、和哉は寝たふりをしながらその呼吸を感じていた。

莉緒の抱える大きな過去ごと抱きしめると決めている和哉。
でも、うまく抱きしめられているか不安だった。

『幸せすぎても、人って泣けるんですね』
和哉は莉緒を幸せな涙で包めるように、もっと、もっと、と自分がこんなにも欲張りだと知るほど、欲が高まっていた。
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