やっぱりあなたと ~クールな上司は強がりな部下を溺愛する~
「市橋」
「はい」
「言ったよな。古屋のためになるように市橋にはフォローしてほしいと話したはずだ。」
和哉はあくまで落ち着いた声で莉緒に話している。
それでも、莉緒は自分がフォローしきれていなかったこと、古屋に失敗経験をさせてしまったこと、和哉から話を聞いていたのにうまく支えられていないこと・・・そして、和哉にとっさに嘘をついてしまったこと・・・いろいろな後悔があふれ出した。
「申し訳ありません」
莉緒はもう一度、和哉に頭を下げた。

「市橋」
「はい」
莉緒は和哉に名前を呼ばれて顔をあげる。
「俺は誰も責めてるわけじゃない。古屋のことも責めてはいない。失敗はあるはずだって俺は予測してた。そこを防げとは言ってないはずだ。」
「はい」
「ただ、その失敗を失敗のまま終わらせないようにしてほしい。」
「はい」
「ここからだぞ。市橋。」
「はい」
莉緒は穏やかな和哉の視線と声に、少し泣きそうだった。
その分、歯を食いしばった。
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