やっぱりあなたと ~クールな上司は強がりな部下を溺愛する~
そんなことをぐるぐると考えながら、急ぎでもない仕事をしていると「もう帰れよ」と誰もいなくなったフロアで和哉が莉緒に声をかけた。
「部長は帰らないんですか?」
「もう少しだけやってく」
「・・・そうですか」
和哉は毎日遅くまで会社に残って仕事をしている。誰よりも努力をして、実力をつけてきたことを誰もが察するほどの努力家だった。
「それでは帰ります。」
莉緒は荷物をまとめて席から立ち上がった。
「市橋」
帰ろうとする莉緒を和哉が止める。

「これ、持っていけ」
そう言って和哉が莉緒に渡したのはいつの日か一緒にペンキを塗った日に和哉が貸してくれたウインドブレーカーだった。
「?」
決して寒くはない天気。
クリーニングに出して和哉に返してから少し経っているそのウインドブレーカーをなぜ和哉が自分に渡したのかわからず莉緒が首をかしげていると和哉がかがんで莉緒の顔を覗き込んだ。
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