堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
悶えるように言った上尾さんに、私は照れながら話す。
「男の兄ですら、初めて会った時『胸がキュンとした』と言っていたので、イケメンには違いないと思います」
「あらま~惚気ちゃって。この幸せ者!」
先に着替え終えた上尾さんはにやにやと私を肘でつつき、それから更衣室を出ていく直前ぼそっと呟いた。
「こりゃますます世良さんが不憫だわ」
世良さんが不憫? どういう意味だろう……?
頭の中に疑問符を浮かべつつ、私も早く仕事に入ろうと、急いで身支度を整えた。
その日は日曜日ということもあり、昼間はひっきりなしにお客さんが訪れた。世良さんの自信作でハロウィン用商品の『カボチャのトプフェントルテ』の売れ行きも上々。
なので、世良さんの休憩中にちょっと持ち場を離れるということはできず、結局閉店の後で彼と話をすることにした。
店内を掃除した後、更衣室へ向かった上尾さんと別れ、私が覗いたのは店の厨房。世良さんは毎日のように、閉店後のそこでケーキの開発や試作を繰り返しているのだ。