堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「あの、世良さん。少しお時間いいですか?」
彼はなにかの生地を丸めてラップに包み、冷蔵庫にしまったところだった。私の声に気づいて「ああ」と返事をすると、シンクで手を洗い、そばにあった丸椅子を私にすすめた。
「大丈夫ですよ、そんなに長くならないので」
「いいから座れ。立ち話は母体によくない」
「えっ? 母体って……」
妊娠のことはまだ話していないのに、まるで知っているみたい……。
呆然としていると再度顎で椅子の方を示されたので、私は遠慮がちに腰を下ろした。世良さんは作業台に寄りかかり、腕組みをしながら話しだす。
「前にタクシーの中で聞いたろ、妊娠じゃないかって。神谷は否定したが、その後も相変わらず調子が悪そうだったから、やっぱりそうなんじゃないかと疑っていた。……その話をしに来たんだろ?」
検査をするまで信じたくなかった私とは違って、世良さんは冷静に私の様子を見て、妊娠の疑惑を深めていたんだ。にもかかわらず、なにも聞かないでいてくれた気遣いが世良さんらしい。