堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

 世良さんはしばらく考え込んだあとで、ゆっくり深呼吸をして私を見た。

「元気な子を生んで、幸せになること」

 思いがけず優しい言葉をかけられ、私は目を丸くした。まさか世良さんがそんなことを言ってくれるなんて……。

「はい。絶対に幸せになるって約束します」

 無意識に浮かんでしまった涙を指先で拭い、世良さんに満面の笑みを向ける。すると彼もほんの少しだけ目を細め、微笑んでくれた。

 初めて見た世良さんの笑顔は少し寂しげで、きっと娘を嫁に出す父親のような気持ちなのだろうと思うと、また少し涙が滲んだ。

 私、いい職場と仲間に巡り合ったな……。そんなほんわかした気分を抱いて帰り支度を済ませ、裏口から店を出る。ちょうどその時、羽織っていたパーカーのポケットの中でスマホが鳴った。

 取り出してみると兄からの電話だった。

 兄とは妊娠報告をして以来ぎくしゃくしているけれど、電話をくれたということは少し怒りが解けたのだろうか。期待しながらスマホを耳にあてる。

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