堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
志門さんと兄がそんな会話を交わしていたなんて寝耳に水だ。
兄の勤務先については私がなにげない会話の中で口に出したことがあったかもしれないけれど、志門さんが実際に訪れるとは夢にも思わなかった。まして、私のいない間に自宅で家族と会っていたなんて。
「そ……それで、どんな話をしたの?」
兄の機嫌が直ったのは、もしかしたら結婚を認めるどころかその逆で、口げんかで志門さんをズタボロにやり込めたとか、思い切り殴ったとか、そんな展開だったのではないかと不安に駆られる。
「瑠璃には内緒にしろと言われてる」
「えっ。ここまで話しておいてそれはナシだよお兄ちゃん! もしかして、志門さんのことを殴って、あの綺麗な顔に傷でもつけたんじゃないの? もしそうなら私、いくらお兄ちゃんでも許せないからね!」
ひと息にまくし立てると、兄はハンドルを握ったまま遠い目をしてため息をついた。
「あ~あ、あんなにお兄ちゃんっ子だった瑠璃が、俺を一方的に悪者にするなんてな」