堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「べ、別に悪者にしてるつもりは」
「別にいいよ、そう思われる態度を取ってたのは俺だ。でも、殴ってはないから安心しろ。正直、いきなり〝瑠璃と結婚させてくれ〟って言い出したら殴るつもりだったんだけど……アイツ、まずは父さんに挨拶させてくれって、仏壇の前に座って手を合わせたんだ。その姿が意外で、いきなり戦意をそがれた」

 志門さん……父に挨拶してくれたんだ。仏壇に向かった彼が目を閉じて手を合わせる凛とした横顔が目に浮かび、胸がじんとする。

「で、父さんへの挨拶が済んだ後は、いかに自分が瑠璃に惚れ込んでいるかを熱心に俺と母さんに説明しまくった。シスコンの俺でもアホくさくなるくらい、瑠璃の長所、かわいい表情、仕草、声、何個並べ立てるつもりだコイツってくらい熱弁してさ。……こりゃ負けたわって、白旗上げたわけ」

 からかうような口調で言われ、頬が熱くなった。志門さんってば、私の前で見せるような甘さを、母と兄の前でも発揮したの?

 恥ずかしいけれど、彼ならやりかねない。その場に居合わせなくてよかった……。

< 108 / 226 >

この作品をシェア

pagetop