堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「お、お上手ですね、日本語……」

 ぽかんとしてそう口にすると、彼はふっと息を漏らして笑う。

「そりゃそうだよ、俺はこう見えてれっきとした日本人だ」
「ええっ!?」

 驚いた私は立ち上がり、改めてジッと彼の容姿を眺める。

 身長は百八十センチ強で、しかも腰の位置が高い。瞳の色は薄茶色。ダークブロンドの髪だって、染めたって感じじゃないのに……。

「クォーターなんだ。祖母がオーストリア人でね」
「あっ。なるほど……」

 ようやく納得して頷きつつ、今はそんな話をしている場合ではないと気がつく。

「それよりすみませんでした。あんな大口叩いておいて、まんまと逃げられちゃって……」
「いや、気にしなくていい。きみが犯罪に巻き込まれなくてよかった」
「でも……。あのスーツケース、貴重品が入っていたんじゃないですか? 私、貧乏学生ですけど少しならお渡しできるお金が」

 そう話しながら、肩から下げている小さなショルダーバッグのファスナーを開けようとすると、彼の手がそっと私の手に触れてそれを制した。

 反射的に、どきりと胸が跳ねる。大きく筋張った彼の手に、いきなり男性を意識してしまったからだ。

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