堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
手にじっとり汗が滲むのを感じていると、五コールほどで彼が電話に出た。
《もしもし、瑠璃?》
よかった、出てくれた……。緊張は少し緩んだものの、志門さんのバリトンボイスが電話越しだといっそう魅惑的に聞こえて、返事にまごつく。
「あっ、あのう……今、お話しできますか?」
《もちろん。ちょうど瑠璃の声が聞きたかったところだ》
呼吸するように甘いセリフを放つ彼に、ますます鼓動が加速する。このまま志門さんのペースに流されたら、本来の用件を忘れてしまいそうだ。そうなる前に、慌てて本題に入る。
「志門さん、今日うちにいらしたんですね。兄に話を聞いてびっくりしました」
《あれ? 瑠璃には内緒のはずだったんだけどな》
「いろいろ聞きましたよ。……なんだか恥ずかしいこともたくさん言ってたって」
小声で呟くと、志門さんがふっと笑った。
《瑠璃の魅力について説明したことか? 仕方ないだろう、全部本心なんだから》
もう、また恥ずかしげもなくそんなこと言って……。でも、そんな彼だからこそ、兄も認めてくれたのだろう。この人なら、きっと妹を幸せにしてくれるって。