堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「あの、志門さん、これ……使わなかったので、お返しします」
「ん? 返すって……?」
差し出された茶封筒を受け取った志門さんが、首を傾げながら中のユーロ紙幣を確認した。そして意味を悟ったらしい彼は、優しく微笑んで尋ねる。
「律儀だな瑠璃は。あの夜の衣装は自分のお金で買ったということ?」
「はい。学生の私に相応の価格の衣装を選んでくれる、とても親切なドレスショップに巡り合ったので、必要なかったんです。店主のソフィーが本当にいい方で」
「ソフィー……どこかで聞いたことのある名だな」
志門さんが視線を落として考え込む。しかし心当たりの人物は思い出せなかったようで、諦めたように話題を変えた。
「じゃ、これは確かに受け取っておくよ。このまま日本円に変えず、俺たちが出会った日の思い出の品として取っておいてもいいかもしれないな」
「そうですね」
お互い目を見合わせて微笑み合うと、志門さんは「じゃあ行こうか」と車を発進させた。