堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「これ、『ふうせん王国シリーズ』の城下町です……! すごく忠実に再現されてる……!」
美術館なので声を潜めながらも、興奮を志門さんに伝える。
雲の上には、生き物も建物もなにもかもがカラフルな風船でできたふうせん王国がある。人々はふわふわした世界で平和に暮らしているが、風船をつついてしまうカラスだけが天敵だった。そのカラスがものすごく悪人顔に描かれていたのを、幼心に怖いと思ったのを覚えている。
「瑠璃が好きだった絵本?」
「はい。何度も読み返してページが破れてしまうほど好きでした」
「じゃあ、買って帰ろう。今回展示されている絵本は、よほど貴重なものでない限りショップで販売もしているそうだよ」
パンフレットを見ながら、志門さんが教えてくれる。
「もしかして、この子に、ですか?」
自分のお腹に手のひらをあてて尋ねると、志門さんは優しく目を細めてうなずいた。
「ああ。ママが好きな絵本なら、きっと気に入るだろう」
「それなら、パパのお気に入りも買って行きましょう? 今日の展示の中に、なにかありますか?」
「そうだな、俺は……」