堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「大丈夫だよ。盗られたスーツケースに入っていたのは、衣類とウィーンに住んでいる祖父母への日本土産だけだ」
「そ……そうなんですか。よかった……」

 彼の手はすぐに離れたけれど、なんとなく目を合わせづらくて、俯きがちに呟く。

 ……やだな、なんでだろう。顔が熱い。

  手のひらでパタパタと顔を仰いでいると、彼の特徴的な甘いバリトンボイスが私に尋ねる。

「でも、きみの勇気と正義感には本当に感謝している。なにか、お礼をさせてもらえないかな?」
「えっ……? そんな、犯人には逃げられちゃったんですから」

 お礼をしてもらうなんて、滅相もない。それに……これ以上この人と一緒にいると、いちいちどぎまぎしてしまって疲れそうだ。

 初めて見た時は、瞳や髪の色にばかり注目していたから気づかなかったけれど、よく見たら、ものすごく整った顔立ちをしているんだもの。

 眉や鼻、顎のラインなどくっきりと直線的なパーツが多い中、少し垂れた目元にちょっとだけ隙があって、そこがまた甘い雰囲気を醸し出していて……。

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