堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「さっそく今日から書こう」
「えっ?」
志門さんがおもむろに腰を上げ、リビングの棚から高級そうなボールペンを出して戻ってくる。そして再び椅子に座ると、彼は【パパと〇〇ちゃんの記録】というページを大きく開き、サラサラとペンを走らせた。
【十月二十日、日曜日。瑠璃から父子手帳をもらう。父親になるのだという実感が、漠然とだが湧いてきた。楽しみでもあるが、責任重大だとも思う。きみが生まれてくるまでに、立派なパパになれるよう、精進していく所存だ】
「これ、子どもに宛てているんですよね? にしては、難しい言葉を使いすぎじゃないですか? 漠然とか精進とか」
クスクス笑いながら思わず指摘すると、志門さんも自分の文章を読み返してうなずく。
「たしかに……。なんだか緊張してしまって、硬い文章になってしまったな」
「でも、なんだかその緊張までもが伝わってくるから、逆にいい記録かもしれないですね。志門さんの当時の心境がよくわかって」
「ああ。あとで見返した時に恥ずかしいかもしれないが、そういうことにしておこう」
ふたりで笑い合っていると、たまらなく幸せな気分で胸がいっぱいになる。
生まれ育った環境や立場は全然違うけれど、このふわふわとしたまあるい空気を共有できる彼となら、きっと明るく楽しい家庭を築けるに違いない。
志門さんの優しい瞳を見つめながら、私は強く確信した。