堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
5*突然の抱擁と告白
翌月には志門さんのご両親との会食も実現し、緊張でガチガチになっていた私に、ご両親は優しく接してくれた。
私がまだ学生であることや、家柄に対しても気になった様子はなく、結婚も私の妊娠も祝福してくれたのでホッとした。
本当はお祖父様とお祖母様もウィーンから駆け付けて私に挨拶したかったそうなのだけれど、予定が合わずに来れなかったらしい。ふたりともひどく残念がっていたと、志門さんがあとから教えてくれた。
「自分たちのなれそめを瑠璃に話したかったんだろうな。俺なんか、小さなころから何百回と同じ話を聞かされている」
「なれそめ?」
会食をしたレストランからの帰り道。私を車で実家に送り届けるため、隣でハンドルを握っている志門さんが語り始める。
「ああ。祖父は宮大工なんだが、その伝統技術を海外にも広めるために、渡欧していた時期があってね。大晦日をウィーンで迎えることになったある年に、ちょうどホーフブルクで開催されていた舞踏会に参加したら、祖母と出会ったんだそうだ」
「ホーフブルクでの舞踏会? 私たちと一緒じゃないですか」
激しくデジャブを感じる話に、思わず目を丸くする。