堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「世良さん、瑠璃ちゃん、とうとう明日から新居で旦那様と暮らし始めるんですってよ」

 上尾さんが話しかけると、世良さんはお金を数えながら無表情で答える。

「唯一独り者の俺への嫌みか?」
「違いますよ。優しすぎて意気地なしの男への嫌みです」
「……こういう性格なんだ。放っておけ」

 よくわからない会話を交わすふたりを横目に、私はガラスのショウケースを開けて、空になったケーキのトレーを重ねていく。

「神谷。それ、全部まとめたらその辺に置いておけ。厨房に下げるのは俺がやる」
「平気ですよ、このトレー軽いですし」
「いいから置いておけ」

 そんな私と世良さんのやり取りを見て、上尾さんが苛立った声を上げる。

「あ~もう! 見てるこっちがまどろっこしい。私が下げますから、お店の方ふたりでお願いしますね!」

 彼女は私の手にあるトレーを奪い取り、厨房に引っ込んでしまった。

 な、なんで上尾さん怒ってるんだろう……? 私のせいじゃないと思うんだけど……だとしたら、原因は世良さん……?

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