堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「お仕事中みたいだけど、今、少し話せるかしら」
「ごめんなさい。まだ後片付けと掃除が……」
雑然とした店内を見回してそう答えた私の背後から、世良さんがぶっきらぼうに言った。
「神谷。中に入ってもらえ」
「えっ? でもまだ仕事が」
「せっかくお前を訪ねてきてくれたんだろ? あとは俺と上尾でやるから」
世良さんの親切はありがたいけれど、よく考えたら友里恵さんは私になんの話があるんだろう。いくら志門さんのお友達でも、婚約者のバイト先までわざわざ来るなんて。このこと、志門さんは知っているのかな……?
なんとなくモヤモヤした思いを抱えつつ、私は友里恵さんに向き直り、「どうぞこちらへ」と休憩室に案内した。
友里恵さんに奥の席をすすめて、テーブルをはさんで向き合う。
「さっそくだけど、瑠璃さん」
友里恵さんがそう切り出した途端、休憩室のドアが開き、お盆にふたりぶんの紅茶を乗せた世良さんがやってきた。
無言で私たちの前にカップを置いていく彼の存在を気にしてか、友里恵さんは一旦口を噤む。