堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
そうして、ポニーテールを揺らして休憩室を出て行く彼女を見送ったが、ドアが閉まる寸前にまた彼女の声が聞こえた。
「あら? 盗み聞きしているなんて、お行儀が悪いんじゃなくって?」
盗み聞き……。もしかして、上尾さん?
ドアを見つめていると間もなくガチャっと開き、そこにいた上尾さんは去っていく友里恵さんの背中にべーっと舌を出してから、私と世良さんのもとへ近づいてきた。
「なんなのよあの妄想女! 全部聞いてたけど、腸が煮えくり返ってしょうがなかったわ! 瑠璃ちゃん、大丈夫……?」
上尾さんにそっと両肩を掴まれて顔を覗かれ、私は力なく微笑む。
「なんか、圧倒されちゃって……まだ呆然としているというか」
「そうだよね。あんなトンデモ妄想、付き合いきれなくて当然だよ!」
「しかし、お前の婚約者は本当にあんなのと友達なのか?」
世良さんがボソッと呟いた言葉に、どきりとした。
志門さんの口から友里恵さんの話を聞いたことはないけれど、友人というのはさすがに嘘ではないと思う。だとしたら今後も、私と志門さんの仲に口を出してくるのは確実で……。