堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「この先、どうすればいいんだろう……? 結婚も、赤ちゃんのことも」
途方に暮れて嘆く私に、母は優しく問いかける。
「瑠璃はどうしたいの? 自分を忘れてしまった薄情な彼とは、お別れしたいの?」
私は少し間を置いて、ふるふる首を振った。
志門さん本人から〝別れよう〟と言われたら考えなければいけないとは思うが、自分から別れたいとは全く思っていない。
「じゃあ、今、瑠璃が一番望むことはなに?」
「今すぐ志門さんが私を思い出してくれて……全部元通りになること」
それは魔法使いでもいない限り叶わない願いだと、自分でもわかっている。でも、母は否定することなくうんうんと頷いて、共感を示してくれた。
「そっか。そうよね。でも、それが叶わないとしたら、どんなふうに彼のそばにいたい?」
どんなふうに? 私はその時初めて、記憶を失ったままの志門さんと生活することを思い描いてみる。
きっとぎこちない毎日だろう。でも、志門さんは基本的に優しい人だ。おそらく互いに気を遣いながら、なんとか生活はできると思う。
生活は、できるけど……それだけじゃ、あまりに切ない。できることならもう一度……彼に愛してもらいたい。
そのために、私はなにができるだろう。