堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「彼が嫌がらなければ……私たちが今まで過ごした日々のこと、聞かせてあげたいな。一緒に見たもの、食べたもの。彼が私にくれた言葉……そういうの、全部」
話したところで彼の記憶が戻るわけじゃないけど……私はあなたにいつも幸せをもらっていたんだって、伝えたい。
「うん。いいと思うわ。きっと、すぐに彼の記憶が戻るってことはないのかもしれないけど、ゆっくりゆっくり、瑠璃が手伝ってあげればいいのよ。彼が自分を見つける作業を」
「お母さん……」
そっか……。いつもは彼に見つけてもらうのを待つばかりだったけれど、今度は、私が彼を見つけてあげる番なんだ。
自分の役割を見つけた私は少し心が救われたような気がして、母に笑顔で頷いてみせた。
それから気を取り直して、食べかけだった親子丼を頬張る。
懐かしくて優しい母の味にまた涙があふれたけれど、私は気にせずぱくぱく食べ進め、記憶を失った志門さんと正面から向き合うための英気を養った。