堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
8*クリスマスプレゼントーーside志門
神谷瑠璃。まだ大学四年生なのだという彼女は俺の婚約者で、現在妊娠五カ月なのだという。しかし、どうしてそんなことになっているのか、俺にはまったく理解できなかった。
俺の記憶は九月の途中で途切れていて、覚えている最後の記憶は、ウィーンに向かう飛行機のファーストクラス。ひどく憂鬱な気分を抱えながら、窓の外を眺めていたことだ。
ただの旅行ならばよかったが、現地に住む祖父母のお節介によって開催される仮面舞踏会で、結婚相手を見つけるよう急かされていた。
名門ハプスブルク家の血を引いている祖母は、その血を絶やしてはならないという使命感のようなものがあり、たったひとりの孫である俺をなんとか結婚させ、子をもうけさなければと躍起になっていたらしい。
しかし、顔もわからない相手とひと晩踊ったくらいで、その場ですぐ結婚したいとなるはずがないだろう。俺はそんな冷めた思いでウィーンに向かっていたはずなのに……。
どこがどうなって、十歳も年下の女性を見初め、しかも出会ってすぐに妊娠させるなどという展開になったのか。いくら考えても、俺の知りたい記憶のページは真っ白で、困惑するばかり。