堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「帰りましょう? 私たちの家に」
瑠璃がそう言って、俺の手を軽く握る。
婚約者である彼女とはつい最近一緒に暮らし始めたらしいが、彼女は俺がこんな状態でも今まで通りの生活に戻ろうとしているらしい。
「つらくないの? こんなふうになった俺と一緒にいて……」
「つらいです」
彼女はそう断言した後で、切実な瞳で俺を見つめながら告げる。
「でも……志門さんと離れる方が、もっとつらいから」
そのけなげな姿に胸がきゅっとつねられて、記憶を失ってから初めて、俺は思った。
彼女を想っていた時の感情は、まだ蘇らない。だけどきっと、俺がこの子を愛していたというのは、紛れもない事実なのだろうと。
「わかった。……帰ろう。一緒に」
そう言って小さな手をぎゅっと握り返すと、瑠璃はふわっとやわらかく微笑んで、再び俺の胸に小さな甘い痛みを呼び起こすのだった。
タクシーで自宅に戻ると、リビングには見たことのない巨大クリスマスツリーが飾られていた。
「志門さんが、私を喜ばせるために用意してくれたんです。飾りつけも全部ひとりでやってくれたんですよ」
「俺が……?」