堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「行くってどこへ?」
「私のバイト先です。今、訳あってケーキがたくさん売れ残っていると思うので……」
瑠璃の表情が暗く陰った。そういえば、瑠璃は自由が丘の洋菓子店でアルバイトをしていると言っていたな。しかし、このかき入れ時にケーキが多く売れ残っているとは、どんな事情を抱えているのだろう。
頭の中に疑問符を浮かべつつも、俺は車を出し助手席に瑠璃を乗せ、自由が丘のElisaという店を目指した。
小ぢんまりとした店のドアを瑠璃とふたりでくぐると、確かに店内には他の客の姿が見当たらず、ショウケースのケーキもあまり減っていなかった。
カウンターに立っていた店員の女性もどこか無気力な様子で「いらっしゃいま――」と言いかけたが、俺と瑠璃の姿を見るなり目を丸くして固まった。
「こんにちは、上尾さん」
「瑠璃ちゃん! それに、旦那様も! やだもう、心配してたのよ~!」
上尾さんと呼ばれた女性はカウンターから出てきて、瑠璃に駆け寄り手を握り合う。そしてちらりと俺の顔を見上げると、衝撃を受けたように口元を手で覆って呟いた。