堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「話には聞いてたけど、実物はさらにイケメンだわ……。瑠璃ちゃんってば、どうせお店がヒマだろうからって、自慢の旦那様を見せびらかしに来たのね?」
「いえいえ、今日は純粋に、クリスマスケーキを買いに来たんです」
瑠璃が照れながら言ったその時、カウンターの奥に見える扉が開いて、店のスタッフと思われる男性がひとり現れた。
「あっ、世良さん! ほら、瑠璃ちゃんの旦那様ですよ!」
目が合ったので小さく会釈すると、彼は気まずそうに頭を下げて、俺の頭に巻かれた包帯を見つめた。
「……大丈夫なんですか、その怪我は」
「あ、ええ。見た目ほどの傷ではないんです。……問題は中身の方で」
自嘲気味に俺がこぼすと、瑠璃が俺にそっと寄り添いながら、店のふたりに説明する。
「今、彼には……私と出会ってからの記憶が、丸ごとないんです」
「えっ」
「どういうことだ……?」
ふたりは怪訝そうに顔を見合わせた後、世良という男性の方が「詳しく話を」と言って、俺と瑠璃を店の裏にある休憩室へと促した。